行政書士とは?
はじめに行政書士とはどのような職業か見ていきましょう。
主な仕事内容
行政書士の仕事は大きく分けて下記の3つがあります。
- 書類作成業務
- 手続代理業務
- 相談業務
主に官公署をはじめとする行政に提出する許認可等の申請書類の作成や、提出手続きの代理を行います。扱う書類は官公署に提出する書類、権利義務に関する書類、事実証明に関する書類、その他「出入国管理」や「難民認定法」に定められている申請などの特定業務です。
また、行政書士が扱う申請の種類は1万を超えると言われ、非常に幅広い範囲を扱います。1万以上の書類を覚えなければいけないの?と不安になるかもしれませんが大丈夫です。行政書士は専門分野を持って仕事をしている人が多いので、自分が得意だと思う分野を仕事にすれば問題ありません。
独占業務
行政書士の独占業務には大きく分類して下記の3つがあります。
- 官公署に提出する書類の作成
- 権利義務に関する書類の作成
- 事実証明に関する書類の作成
該当申請は全部で30種類以上あり、たとえば以下のような申請が行政書士の独占業務に当たります。
- 建設業許可申請
- 宅地建物取引業免許許可申請
- 農地転用許可申請
- 飲食店営業許可申請
- 酒類販売業免許申請
- 旅館営業許可申請
- NPO法人設立認証申請
- 医療法人設立許可申請
年収
厚生労働省の調査によると、行政書士の年収は約551.4万円といわれています(参考:職業情報提供サイトjobtagより)
また年収内訳のうち36%は600万以上、内9%は1000万を超えています。都道府県によっても平均年収は異なり、都市部が高い傾向にあります。20代〜30代では300〜400万台が平均年収でますが、業務の経験に応じて実績と信頼が積み重なり、着実に給与が上がっていくと考えられます。
(出典「MS-Japan調べ」より)
行政書士のさまざまな働き方
行政書士の働き方は大きく「独立して働く」「事務所に所属して働く」「一般企業で働く」の3つです。ここではもう少し細かく見ていきましょう。
独立して働く
まず最初は独立して働く方法です。
独立というと難しいイメージがありますが、実は行政書士の8割は独立開業しています。行政書士は資格取得や登録に実務経験を必要としないため、未経験でも独立開業自体は可能です。そのため早く独立したい!という方にも向いている職業だといえます。
独立開業すると、会社員と違い時間や場所に縛られることはありません。働き方を自分でコントロールできる点や定年退職がない点も大きなメリットといえます。また独立開業は依頼された仕事の報酬はほぼ全て収入となりますから、能力次第で高収入を目指せるのも魅力です。
ただし独立すれば仕事は自分で営業して取ってくる必要があります。事業を軌道に乗せられるかどうかは、独立後いかに仕事を取ってこられるかにかかっています。
事務所に所属して働く
どこかに所属する場合、行政書士の就職先は主に士業事務所になります。
事務所に所属して働く場合、安定して給与を受け取ることができるのが大きなメリットです。また独立開業と違い、経営や営業を自分でする必要がないので、純粋に行政書士の仕事に集中できます。
いつか独立したいけどすぐには不安、という方は事務所に所属して経験を積むのも良いですね。士業事務所には先輩の行政書士がいるので、分からないことがあればいつでも尋ねることができます。
一般企業で働く
企業に勤める場合、主に法務部や総務部などで、書類作成や手続きに携わることで行政書士の知識を活かせるでしょう。
ただし、一般企業では行政書士として働くことはできませんので注意が必要です。一般企業で行政書士の業務を行うことは、行政書士会が禁止しています。そのため一般企業で働く場合は、あくまで行政書士の知識を生かして働くということになります。
副業として働く
一般企業として働くかたわら、副業として行政書士の業務をすると言う方法もあります。
行政書士の資格を取得したとしても、今勤めている会社をすぐにやめるのは不安が大きい人もいるでしょう。そこでまず副業として行政書士の業務に取り組むことで、本格的に独立する前に行政書士の実務を経験し、独立開業に備えることができます。
またこの期間に信頼できる顧客を増やしていくこともできるのもメリットの一つです。何より本業の収入は担保できるので、資金面の不安がありません。
事前に自社が副業可能かはきちんとチェックする必要があります。
主婦をしながら働く
また主婦をしながら働く方法もあります。
行政書士は自宅で開業できますし、公的機関への書類提出は官公署が開いている平日昼間の時間帯なので、主婦が動きやすい時間帯でもあります。
もちろん独立であれば自身で仕事を取ってくる必要はありますが、それさえクリアできれば家族の予定に合わせて柔軟に業務量をコントロールできるのも魅力の一つです。行政書士事務所でパートを募集している場合もあるので、求人を確認してみるのも良いでしょう。
行政書士になるには
行政書士になる方法は資格試験に合格するだけではありません。ここでは行政書士になる方法を幾つかピックアップしてご紹介します。
資格試験に合格する
一つ目はスタンダードに資格試験に合格する方法です。
行政書士は、行政書士法によって定められている国家資格であり、資格取得のためには毎年11月に行われる行政書士試験に合格する必要があります。勉強に必要な時間は、法律の知識がある人であれば500〜600時間、初心者であれば1000時間といわれていますので、計画的な勉強が必要です。
合格後、行政書士名簿に登録されることによって、行政書士として仕事を受けることが可能になります。
公務員の特認制度を利用する
次に公務員の「特認制度」を利用する方法です。
特認制度とは、公務員として17年以上ないしは中卒であれば20年以上、行政事務を担当した場合には、行政書士の資格を有することができるという決まりです。制度を利用する条件を満たしていれば、行政書士試験が免除されます。
ただし、特認制度を利用するには高校卒の場合は17年以上、中学卒の場合は20年以上、公務員としての行政事務を行った経験が必要になります。そのため自身のキャリアを考えた時に、特認制度を利用するのが良いかどうかは一長一短あるでしょう。
他の士業の資格を取得する
行政書士試験は弁護士、弁理士、公認会計士、税理士のいずれかの資格を有している場合、試験が免除されます。
もしあなたが上記の資格のいずれかと行政書士とのダブルライセンスで働きたいと思っている場合は、先に片方を取れば行政書士試験は免除されます。
行政書士の資格試験
最後に行政書士試験の概要について、受験資格、試験内容、合格基準、合格率の順に解説します。
試験内容
試験内容は主に2つに分かれており、憲法や行政法、民法など法令からの主題と、行政書士の業務に関連する一般知識からの出題に分かれます。
試験科目は下記の通りです。
試験科目 | 内容等 |
---|---|
行政書士の業務に関し必要な法令等(出題数46題) | 憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)、民法、商法及び基礎法学の中からそれぞれ出題し、法令については、令和5年4月1日現在施行されている法令に関して出題します。 |
行政書士の業務に関連する一般知識等(出題数14題) | 政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解 |
合格基準
また行政書士試験は、下記の通り明確に合格基準が定められているのが特徴です。
(1)行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、122点以上である者
(2)行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、24点以上である者
(3)試験全体の得点が、180点以上である者
法令科目、一般知識共に一定基準の点数を取ることが求められますので、どちらかの科目を捨てて片方に集中するということはできません。満遍なく勉強する必要があります。
合格率
行政書士試験の合格率は大体11%程度で推移しています。
下記が直近5年間の受験者数と合格者数、合格率です。昨年度は13.98%と比較的高かったようですが、10人受けたら9人が落ちるので難関といえるでしょう。
年度 | 受験申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
令和5年度 | 59,460 | 46,991 | 6,571 | 13.98% |
令和4年度 | 60,479 | 47,850 | 5,802 | 12.13% |
令和3年度 | 61,869 | 47,870 | 5,353 | 11.18% |
令和2年度 | 54,847 | 41,681 | 4,470 | 10.72% |
令和元年度 | 52,386 | 39,821 | 4,571 | 11.48% |
(参考:一般財団法人行政書士試験研究センターホームページ『最近10年間における行政書士試験結果の推移』より)
勉強時間
行政書士試験合格に必要な勉強時間は大体500時間程度と言われています。ただし法律に関する予備知識がない方、つまり初心者が試験に合格したい場合は1,000時間程度の勉強時間が必要だと言われています。
あなたが法律に関して初心者だとすると、毎日3時間勉強したとしても1年近く、5時間勉強したとしても半年以上の期間が必要です。仕事をしているか否かで平日・休日でとれる勉強時間も変わってくるので、スケジュールを立てて計画的に勉強する必要があります。
行政書士試験は一年に一度の試験なので、一発で合格したいと思う方がほとんどだと思います。また初めてで何から始めればいいかわからない!という方にはスクールや通信講座を受講するのもおすすめです。