宅建士資格と試験内容について
「宅建士(宅地建物取引士)」とは、宅地建物取引業法によって定められた、公正な不動産取引を不動産会社に行わせることを目的とした国家資格です。
宅建士の資格を取得するための「宅建試験(宅地建物取引士試験)」は例年10月の第3日曜日に行われています。試験の内容については下記の表をご覧ください。
出題形式 | 4肢択一 |
解答形式 | マークシート方式 |
問題数 | 50問 |
配点 | 1問1点(50点満点) |
試験時間 | 2時間 |
試験範囲 | 権利関係 :民法10問、特別法4問 宅建業法 :20問 法令上の制限: 8問 税金その他 : 3問 免除科目 : 5問 |
受験資格 | なし |
参考記事 宅建の試験内容・出題範囲
宅建を取得するメリット7選
宅建を取得することには下記の7つのメリットがあります。
・ メリット1 宅建士だけにできる仕事がある
・ メリット2 不動産会社への就職・転職に役立つ
・ メリット3 不動産業界以外への就職・転職にも有効
・ メリット4 年収アップを見込める
・ メリット5 女性の再就職に強い
・ メリット6 ダブルライセンスに挑戦できる
・ メリット7 自分が不動産取引をする際に宅建の知識を活かせる
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
1. 宅建士だけにできる仕事がある
宅建士の仕事には「法定職務」と呼ばれる宅建士のみが行える業務が3つあります。
1. 重要事項の説明
宅建士の法定職務の1つは、不動産の売買契約や賃貸契約を結ぶ消費者に対して、契約書の重要事項を分かりやすく説明することです。
不動産取引では大きな金額が動くことがあるため、専門知識を持たない一般の消費者を不利益から守る必要があります。そこで不動産会社に対して宅建士を通して契約書の重要事項を消費者に説明する義務が宅地建物取引業法によって課されているのです。
宅建士が消費者に対して説明を行う内容には、売買代金や登記上の名義人、抵当権、契約解除条件などがあります。
2. 重要事項説明書の作成と記名
宅建士のもう1つの法定職務は、消費者が不動産契約を結ぶかを決める上で重要な判断材料になる情報を記載した「重要事項説明書」を作成することです。
宅建士には自分が行う重要事項の説明と、重要事項説明書に書かれている内容に相違がないことの証明として書類作成時に記名をすることが義務付けられています。
3. 契約書への記名と押印
宅建士の法定職務の3つ目は契約書の内容確認と、記名・押印を行うことです。宅建士が記名をすることによって、契約書の内容が保証されます。
2. 不動産会社への就職・転職に役立つ
宅建は不動産会社への就職・転職に強い資格です。
不動産会社には各事務所に5人につき1人以上の成年の宅建士を置く「設置義務」が課されています。もし宅建士に欠員が出た場合は、2週間以内に同資格を持つ人材を補充しなければなりません。
また、不動産会社が消費者と不動産契約を結ぶためには、契約締結に必須になる法定職務を行える宅建士が必要です。
不動産会社によっては、仕入部門での募集要項で、宅建士資格を必須にしている会社もあるほどです。
もし募集要項に宅建士資格が含まれていなくても、宅建を持っていることで自分が幅広い仕事を任せられる人材であることをアピールできます。
3. 不動産業界以外への就職・転職にも有効
宅建士資格は金融業界や建築業界などの不動産業界以外への就職・転職にも強い資格です。
例えば、金融機関では不動産を担保にしたローンの貸し出しを行なっているので、不動産取引のプロである宅建士の知識が役に立ちます。募集要項の歓迎条件に宅建士資格を含めている金融機関も多いです。
また、建設会社が自社で建築した物件を販売するためには宅建士の存在が欠かせません。大手の建設会社には自社で建設した物件を販売するために宅建業の免許を取得している企業が多いです。宅建士の資格を持っていれば、建設業界への就職・転職活動を有利に進められるでしょう。
4. 年収アップを見込める
宅建士の資格を所持している従業員に対して資格手当を支給している企業は多いです。宅建への資格手当の一般的な相場は5,000円~30,000円程といわれています。年収に換算すると6万〜30万円ほどの収入アップにつながる計算です。
また、宅建士の取得を昇進の条件にしている会社もあります。宅建を取得することで昇進と年収アップを実現できる可能性が増すでしょう。
尚、宅建士の給料と年収について別記事で詳しく紹介をしていますのでご参照ください。
関連記事 宅建士(宅地建物取引士)の給料・年収はどれくらい?資格取得メリットも解説!
5. 女性の再就職に強い
宅建は結婚や出産などの理由で勤めていた会社を退職した方が再就職を実現するのに役立つ資格です。独占的な法定職務を行える宅建士の資格を取ることで、年齢にとらわれず再就職活動を進めることができるでしょう。
宅建は不動産業界で歓迎される資格です。不動産会社には宅建が活かせる営業サポート、宅建事務、アドバイザーなどのさまざまな仕事があるので求人の種類は豊富です。
宅建士資格の所持者を対象にした求人の中には正社員採用だけでなく、パートやアルバイト採用も多くあるので自分のライフスタイルに合った働き方を選ぶことが可能です。宅建を持っているとパートやアルバイトでも資格手当が支給されることが多くあることもメリットです。
また、不動産適正取引推進機構の調査によると、宅地建物取引士に占める女性の比率は1993年では17.4%、2021年度末では25.2%と7.8 ポイント高くなっています。宅地建物取引士に占める女性の比率は今後も上昇傾向が続くことが見込まれています。
6. ダブルライセンスに挑戦できる
宅建試験と他の資格試験で出題される科目が重複していることが多いのもメリットです。宅建を取得する過程で身につけた知識を活かしてダブルライセンスを狙うことができます。
例えば、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格試験では、宅建と同様に不動産関連の問題が出題されます。
宅建の勉強をすることで、FPの資格を取得するための学習を効率よく進められるでしょう。
宅建とFPの両資格を取れれば、顧客が不動産投資による資産運用を行う場合や、不動産を担保としたローンを組む際に、顧客に対して有益なアドバイスを行うことができます。
また、宅建とのダブルライセンスのもう一つの例として行政書士があります。宅建で学ぶ民法についての知識を行政書士試験に活かすことが可能です。
行政書士の主な仕事は下記の2つです。
・ 行政機関への提出書類の作成
・ 権利義務と事実証明に関連する書類の作成と相談
宅建とのダブルライセンスとして行政書士資格を持っていると、不動産取引時に農地転用や営業許可取得のための行政への書類手続きが必要になった場合にワンストップでの対応ができます。
FPや行政書士以外にも、宅建とのダブルライセンスを目指せる資格は多くあります。他の資格との相性が良い宅建を取得することは、自分の仕事の幅を広げる上でも大きく役立つでしょう。
7. 自分が不動産取引をする際に宅建の知識を活かせる
宅建士としての知識を持っていると、自身でマイホームを購入する場合や、賃貸契約をする際に損をしなくなります。
マイホームを購入する場合であれば、物件の金額や住宅ローンの返済計画が妥当であるか、建設会社を信用できるかの判断がつくようになります。
また、優良な賃貸物件を探したり、引越し時に円滑な退去をすることにも宅建の知識は有効です。
宅建を持つことで、より安全な不動産投資を行うことができるようになれるでしょう。
宅建士資格のデメリット
宅建士資格には下記のデメリットがあります。
・ 資格としての希少性に乏しい
・ 宅建士証の交付と更新に費用がかかる
・ 不動産営業職では宅建士資格はあまり重視されない
・ 宅建士の仕事には訴訟のリスクがある
デメリットはありますが、克服することは可能です。
資格としての希少性に乏しい
宅建は毎年の受験者が20万以上にも上る人気資格で、例年3万人近合格を出しています。
宅建の合格者は累計で100万人を超えるため、希少性のある資格とは言い難いです。
宅建を持っているだけで就職や転職を実現させることは難しいため、資格以外の応募者としての魅力を企業にアピールできるかが重要です。
宅建士証の交付と更新に費用がかかる
宅建士として仕事をするためには受験した試験地の都道府県庁から宅地建物取引士証の交付を受ける必要があります。
宅地建物取引士証の登録手続きには下記の費用が発生します。
・ 資格登録手数料:37,000円
※宅建士としての実務経験が2年未満の方は「宅建士登録実務講習」の受講が別途必要。
受講費用は20,000円程
・ 宅地建物取引士証の交付手数料:4,500円
・ 宅地建物取引士証の更新費用は16,500円(法定講習の受講料12,000円+交付手数料4,500円)。更新期間は5年に1度
・ 宅建試験合格から1年以上経ってから宅建士証の交付を受ける場合は法定講習の受講が必須。受講料は12,000円
尚、宅建試験に合格をした後で宅地建物取引士証の登録手続きをするかは任意です。宅建士資格そのものは生涯有効なので、自分が実際に宅建士として仕事をする際に登録手続きをすれば問題ありません。
宅地建物取引士証の登録・更新時に費用がかかりますが、コストを遥かに上回る収入を稼げる可能性が宅建士の仕事にはあります。
関連記事 宅建の合格後、登録の手続きを解説!
不動産営業職では宅建士資格はあまり重視されない
宅建を持っていなくても不動産営業で契約を取ることはできます。
不動産営業は契約件数や売り上げがはっきり分かるため、他の担当者と比較されやすい仕事です。資格を持っていても売り上げに貢献できていなければ評価はされません。
営業力を身につけることで、宅建士としての知識をより活かせるようにしましょう。
宅建士の仕事には訴訟のリスクがある
宅建士は自分の名前を記載した重要事項説明書を作成して、顧客に対して不動産契約書の内容を分かりやすく解説する責任の重い仕事です。
万が一、説明不足や書類のチェックミスなどが原因で顧客との間に行き違いが発生した場合には、顧客から多額の損害賠償を請求されるリスクがあります。
通常、不動産会社ではリスク管理のために複数の宅建士によるチェック体制を敷いていますが、自分でもミスや誤解を発生させないよう常に細心の注意を払いましょう。
宅建士は将来性のある仕事なのか?
宅建士は将来性のある仕事だといえます。理由は次の通りです。
宅建士に対する需要は安定している
日本の人口減少が原因で不動産需要が低下する可能性はありますが、不動産需要そのものがなくなることはありません。人口減少下にあっても開発が進んでいる地域は存在します。
また、将来的に発生する可能性がある空き家や空室問題を解決するためには宅建士が持つ知見が必要とされるでしょう。さらに、不動産会社には各事務所に5人に1人の割合で宅建士を設置する義務があるため、宅建士の仕事がなくなる可能性は低いといえます。
宅建士の仕事はAIで代替できない
宅建士の法定職務や、不動産取引において重要になる顧客への対面での対応をAIで代替することはできません。
宅建士は不動産契約の重要事項を説明するだけでなく、顧客に寄り添った対応をし、時には代替え案を提案する必要があります。また、高額な物件を取り扱う不動産取引には生身の人間同士の信頼関係が不可欠です。
土地価格の査定や一部の書類作成業務をAIで代替できる可能性はありますが、やはり宅建士による最終確認は必要です。
宅建士の知見が求められる新しいサービスが生まれてきている
宅建士の知見が役立つ新しいサービスの例に「リバースモーゲージ」があります。リバースモーゲージとは、高齢者が自身の居住する住宅や土地を担保にして金融機関から融資を受け取り、居住者が死亡した際に金融機関が担保の不動産を売却することで返済を行う金融商品のことです。
宅建士のアドバイスを受ければ、リバースモーゲージのサービスを利用する際にトラブルや損失を避けることができるでしょう。
リバースモーゲージ以外にも宅建士の知識が必要な新しいサービスが今後さらに出てくる可能性はあります。時代の変化に応じて生まれる新しいサービスに対して宅建士としての知見を活かすことができれば長く仕事を続けられるでしょう。
公務員や公務員志望者が宅建を取るメリットは何?
都道府県庁や市役所などの行政機関には土地と建物、不動産に関連する税務を管轄する部署が多くあります。該当する部署に配属されれば、宅建の勉強で身につく法令上の制限、税金などの知識を活かして働けるチャンスがあるでしょう。
宅建の知識を活用できる部署の例をいくつか紹介します。
都道府県庁 | 都市計画課、県土整備総務課、住宅計画課、道路建設課、税務課、建築指導課など |
市役所 | 建築指導課、区画整理課、都市計画課、用地課、市民税課、農政課など |
既に公務員として勤務されている方が宅建を取得するメリットは次の通りです。
・ 宅建の知識が求められる部署やプロジェクトで仕事ができる可能性が増す
・ 体系的な知識を身につけることでスキルアップができ、仕事の幅が広がる
・ 民間企業への転職に役立つ
一方で、公務員を志望する方の場合は、宅建の知識を採用試験時にアピールすることができます。
宅建は不動産投資にメリットがある資格なの?
宅建は不動産投資に必須な資格ではありませんが、取得していることのメリットは多いです。
不動産投資家が宅建を持つことのメリットを紹介します。
・ 短期間で繰り返し不動産の売買を行うことができる
・ 不動産の権利関係や法令上の制限、税金関係の知識に基づいた物件選びや売買ができる
・ 違法な物件かどうかの見分けがつけられる
・ 金融機関や不動産とより対等な取引ができる
・ 不動産投資の資料やセミナーの内容を理解できる
・ 契約書や重要事項説明書の細かい内容まで理解できる
・ 不動産投資家としての信頼性を高められる
・ 自分の所有する賃貸物件の入居者や退去者との請求に関するトラブルを防げる
宅建を取得することで、不動産投資をより安全かつ効果的に行うことができるようになります。
宅建試験の合格率と必要な勉強時間
宅建試験の直近10年間における合格率は15〜17%程、合格点は50点満点中31〜38点で推移しています。
参考 宅地建物取引士-試験実施概況(過去10年間)
宅建試験の合格率は不動産鑑定士や行政書士、税理士資格試験に比べると若干高くなっています。
資格名 | 合格率 |
宅建士 | 15〜17%程 |
不動産鑑定士 | 7〜12%程 |
行政書士 | 6〜15% |
税理士 | 8~15% |
一般的に、宅建試験合格に必要な勉強時間は200〜300時間、勉強期間は半年間です。
宅建試験に独学で合格することは可能ですが、通信講座を併用された方が合格できる可能性は高いです。可能であればスクールに通うことをご検討されてもよいでしょう。
宅建の合格率や難易度、合格のポイント、独学での勉強法については別の記事で詳しく解説をしていますのでご参照ください。
関連記事 宅建の合格率・合格点は?試験の難易度や試験範囲、合格のポイントについて解説
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まとめ
宅建は就職や転職だけでなく、収入アップの実現に役立つ資格です。
また、宅建はマイホーム購入や賃貸契約だけでなく、不動産投資にも有効な資格でもあります。
宅建を取得することのメリットは、キャリアと人生の選択肢を増やせることだといえるでしょう。
宅建士を目指されたい方向けにスクールと講座を選ぶ際のポイントを下記の記事で解説しているので、ぜひご参照ください。