独学で行政書士試験に合格することはできる?
行政書士試験は独学でも合格することができる
行政書士試験は社会保険労務士試験やマンション管理士試験、公務員でいうと大卒レベルの地方上級・市役所・ 国家一般職などの試験と同じ難易度といわれているため、一見、独学で合格することはできないのではないかとお考えになられた方もいらっしゃるかもしれません。
行政書士試験に合格された方の多くは、通学講座や通信講座を受講されて合格を勝ち取ったという方々もいらっしゃるかと思いますが、独学で合格された方もいらっしゃいます。
独学で行政書士試験に合格されている方は、「他試験の合格実績があったり学習経験がある」「大学で行政書士試験の主要科目である民法や行政法を学習したことがある」「公務員で行政法に詳しい」といった方々が合格に近い方であると考えられます。
ですが、インターネットで検索をしてみますと、法律系試験の学習経験のない方が、行政書士試験に独学でチャレンジして合格されたという事例もあります。正しい勉強法を採用することで独学でも行政書士の試験の合格が近づくでしょう。
ちなみに、行政書士試験の平均勉強時間は平均して、約600時間といわれています。
独学の場合は、スクールの通学講座や通信講座を受講している場合と異なり、不明点などを聞くことができないため、自分自身で調べて対応していく必要があります。
そのため、平均よりもっと多くの勉強時間が必要になってしまうかもしれません。
行政書士試験を独学で学習するメリットは?
コストを抑え、自分のペースで学習することができる
行政書士を独学で学習する大きなメリットとしては、費用を抑えることができるという点が挙げられます。
独学でかかる費用
合計で約45,000円の費用がかかります。
内訳としては下記の通りです。
・テキスト費用:約5,000円(入門書や総合テキストなど)
・問題集費用:約18,000円(基本問題集・肢別問題集・一問一答問題集・40字記述式問題集など)
・過去問費用:約2,500円
・行政書士試験六法費用:約4,000円(ミニマム六法だと約2,000円)
・模試費用:1回約4,000円(パックで申し込むと1回あたりの費用を安く抑えることができます)
・本試験受験:費用7,000円(令和元年度試験の場合)
通信講座を利用する場合の費用が平均50,000~80,000円、受験料7,000円を足すと57,000~87,000円ほどといわれています。
ただし、模試や六法の有無は講座により異なりますので、別途費用が必要となる場合もあります。
通学講座の場合、費用の平均は約200,000円で受験料7,000円を足すと、約207,000円必要となります。
こちらも通信講座の場合と同様に、別途、模試代や六法購入費が必要となる場合があります。
他にも「会場での模試以外を除いて基本的に自分のペースで学習できること」「テキストなどがあれば好きな時間好きな場所で学習できること」などが行政書士試験を独学でチャレンジする場合のメリットとして挙げられます。
行政書士試験を独学で学習するデメリットは?
不明点が解消できなかったり、法改正などの最新情報を得ることができない可能性がある
独学で学習する場合、スクールの通学・通信講座を受講した場合と比べて、行政書士試験を受けた際の合格率が劣ってしまう可能性があります。
行政書士試験を独学で学習している最中に不明点があった場合、インターネットで検索をしたり、新たにテキストを購入したりして調べる必要があります。
スクールの通学講座を受講された場合、講義後に講師に直接聞くことができたり、通信講座を受講する場合でも質問に回答をしてくれるといったサポートを利用することもできるでしょう。
独学で行政書士試験を学習する場合、最新情報を多くキャッチできない可能性があります。
例えば、2020年行政書士試験では、短期消滅時効の廃止などの債権法における改正点や遺言制度に関する見直しなどの相続法の改正点が出題される可能性があり、この点につき情報収集し対応する必要があるのです。
独学で費用を安く済ませようとして古いテキストを使い独学で学習される場合、最新情報に対応できないといったリスクもありますので要注意です。
通信講座であれ通学講座であれ、受講することで法改正などの最新情報を得ることができるようになるでしょう。
行政書士試験を独学で合格するための勉強法
(1)試験本番日から逆算をして学習計画をたてる
行政書士試験は独学では、理解することが難しい民法や行政法などの複数の法律科目を学習する必要があります。
法律科目が出題される試験は数多くありますが、法的知識が問われる行政書士試験は、法律を始めて学ぶ方からするとかなり難しく感じられるかもしれません。
そのため、独学で行政書士試験に1発で合格するためには、学習スケジュールをきちんと立てるという勉強法を採用する必要があるといえます。
特にお時間を割くのが難しいという方は、行政書士試験の独学時、勉強時間を確保できにくくなるため無駄のない学習が必要不可欠となるので、学習スケジュールを必ず立てて、計画通りに学習を進めていけるようにしましょう。
例年、11月の第2日曜日に行政書士試験はおこなわれます。
行政書士試験の勉強時間の目安は約600時間ですが、不明点をすぐに解決することができないといった事態も想定されるため、独学の場合は勉強時間をさらに多めにお見積りいただくと良いかもしれません。
たとえば、通信講座では、6か月~12か月の学習期間を設けていることが多いです。
通信講座でも学習期間が長めの12か月に合わせて、独学の場合は約1年程度の学習期間を確保されるとよいでしょう。
行政書士試験の独学おすすめスケジュール
【受験年前年の11月中頃から12月中頃までの1か月】
・基礎法学
法学の基礎を学ぶので始めに学習されるとよいでしょう。
学習量は少ないものの、学習始めなので少し余裕を持たせる方がよいでしょう。
【受験年前年の12月中旬から試験年1月一杯の1.5か月】
・憲法
他の法規を学習する場合に役に立ちます。
【試験年の2月から4月までの3か月】
・民法
主要科目の一つであり、学習量が多いことをふまえてこの時期からの学習が良いでしょう。
日常生活で馴染みがあるので行政法より学習しやすいといえます。
【試験年の5月から7月の3か月】
・行政法
主要科目の一つです。
この時期に学習を始めていければ、本試験までに学習がほぼ確実に終わらせることができるでしょう。
【試験年の8月一杯の1か月】
・商法(会社法)
配点が比較的少ないため、万が一学習が追いつかない場合は重要ポインントだけの学習するという方法も良いかもしれません。
【試験年の9月から10月中頃までの1.5か月】
・一般常識
政治・経済・社会などの分野は比較的新しい話題も問わることもあり、また、一般常識だけ基本的に法規ではないため学習の仕方が異なるので、最後に学習をされた方が良いかもしれません。
時間がない場合、対策を取りやすい情報通信・個人情報保護と文章理解を重点的に学習するがおすすめです。
この科目を捨て科目にすることはできませんのでご注意ください。
【試験年の10月下旬】
・模試
【試験年の10月中頃から試験日まで】
・総復習
テキストなどの暗記を行うとよいでしょう。
重要事項さえ覚えていれば応用に活かすことができますし、重要事項のまとめた書籍が1,500円位で販売しているので必要に応じて取り入れてみてはいかがでしょうか。
【試験年の11月の第2日曜日】
・本試験
関連記事:行政書士試験合格に向けてスケジュール、勉強時間などを動画でわかりやすく紹介!
(2)頻出問題は完璧に回答できるまで解く
出題傾向をつかむ
行政書士試験は、6科目ありますが、出題されやすい分野や項目の傾向はあります。
例えばですが、行政事件訴訟法の条文や判例は問われることが多いといえます。
独学時、効率的な勉強をするには、頻出の分野や項目を特定して学習する方が効率的であるといえるでしょう。
絶対評価の試験で、300点中180点以上得られれば行政書士試験は合格することができます。
どの分野や項目が頻出問題であるのか分からない場合、「行政書士・よく出る分野」などのワードでインターネット検索すると、紹介しているサイトがあるので参考にしてみるのもよいかもしれません。
また、独学用のテキストによっては、出題される可能性が高い分野や項目に関する案内をしているものもあるので、それらを購入しても良いでしょう。
業務でも重要な部分が頻出問題となる
出題されやすい分野や項目というのは、行政書士となった場合に必要な知識だからこそ、何回も出題されているとも考えられます。
そのため、頻出問題を確実に覚えると、行政書士になった場合の実務を行う際に役立つ可能性があります。
基本的に、出題されやすい分野や項目からの問題は、行政書士試験の過去問をアレンジされることが多いです。
そのため、過去問で問われている重要ポイントを抑えて学習する勉強法を採用することが頻出問題に強くなる秘訣ともいえるでしょう。
行政書士試験に合格するための勉強時間はどのくらい?
独学の場合で約800~1,000時間程度
行政書士の仕事は、法律の幅広い知識が問われる国家資格です。
そのため、初めて法律関係の勉強を独学でされる方の場合だと、約800~1,000時間ほどかかる場合もあります。
最低500時間は必要
仕事の内容は、主に行政への書類提出や作成、申請の代行、相談業務で詳細は更に幅が広く、法律全般に関わる内容のため、個人や法人の顧客にも対応できるように、幅広い分野を勉強する必要があります。
中には、短期集中で500時間以下の勉強で合格された方もいらっしゃるようですが、少なくとも約500時間の勉強は必要になるともいえます。
実務では、個人相談で遺言書や相続に関する書類作成のサポート、相談を行い、相続に関しては財産調査などを代わりに引き受ける、他にも、店を開業する時に必要な申請書類の作成と提出代行など、幅広い専門的な業務をおこなわなければなりません。
法律関係の手続きは、一般の人には対応しづらい生活問題をサポートをしていくため、知識がないと難しいことも多いです。
法律全般の知識を使って、顧客の悩みを解決するためにも、試験勉強には少なくとも500時間、多い場合は1,000時間以上という勉強時間が必要になるといえます。
講座などを受講し効率的に学習することで、勉強時間を短縮することができるかもしれません。
1日2時間の勉強で合格をできた方もいる
行政書士の資格は、他の法律系の資格よりも合格がしやすいことが分かっており、中には、1日2時間の勉強で最短合格に繋がった方もいます。
短い時間で効率良く試験に合格した方は、通信講座やスクールなどを上手く活用していることも分かりました。
例えば、1日2時間勉強を毎日継続した場合、
・1日2時間×一ヶ月(30日)=約60時間
約60時間×9ヶ月=約540時間
上記のように1日2時間の勉強を一ヶ月続けた場合、約9ヶ月後には試験合格に必要な平均500時間を超えることができるでしょう。
この方法なら、忙しい社会人でも毎日勉強を続けることが可能です。
また、1日に行う勉強時間は2時間なので、休日に羽を伸ばすこともできます。
1日2時間で合格した方の場合、通勤時間や昼休みに復習して音源教材も活用するなど、ひたすら教科書を読み込んでテストを行い、何度も過去問題集を繰り返し解いたそうです。
そして、民法や行政法、一般知識など、試験問題で重要視される要点を押さえた学習方法を行った結果、見事合格に繋がりました。
何度も繰り返すことこそが、最短合格のポイントともいえます。
行政書士試験を独学で合格するためのおすすめテキストは?
おすすめテキスト1:うかる! 行政書士 入門ゼミ 2023年度版
行政書士試験の入門書(入門テキスト)として絶大な人気を誇るのが、『伊藤塾のうかる!行政書士シリーズ』です。伊藤塾は司法試験や公務員試験にも強いと有名で、独学用テキストの完成度の高さには定評があります。
その中でも入門テキストとされるのが「うかる! 行政書士 入門ゼミ」です。
伊藤塾の書籍の特徴は、「とても分かりやすい」ということで、理解するのが難しい法律科目でも、普通の本のようにスラスラと読めると評判です。
大型書店チェーンの行政書士試験の入門書部門で、2012年11月から2018年8月まで6年連続売上No.1を記録した人気シリーズです。
シリーズ本での口コミでは、「初心者でもとても分かりやすいようになっている」「重要な論点をギュッと濃色している」などの声があります。
行政書士試験の独学用テキスト、『うかる!行政書士入門ゼミ』の特徴は以下のとおりです。
・「行政書士試験とは何なのか」「各科目の全体像と体系」を容易にイメージすることができる
・「法律の学習方法やすすめ方」「学習モデルプラン」「学習進度表」など、初学者が知りたい点が記載されている
・イラスト・図表・具体例があるので、法律科目だとしても理解しやすい
・現役で活躍する行政書士の業務と一日のスケジュールが掲載されており、合格後の実務のイメージができる
・伊藤塾の行政書士試験の総合テキストとリンクしていて、一緒に利用すると学習がスムーズに行く
参考 Amazon うかる! 行政書士 入門ゼミ 2023年度版
おすすめテキスト2:行政書士過去問マスターDX
東京法経学院は、1961年に司法書士試験指導会として創立した、老舗の法律専門学校であり、長年培ってきた合格ノウハウを持っています。
過去問題集は過去5年間の本試験問題が対象となっていて分量としては学習しやすい量ではないでしょうか。
『行政書士過去問マスターDX』は優れた過去問テキストですが、独学時、1回で覚えるのではなく2~3回繰り返し学習した方が「本試験で高得点を取る力」を身に付けることができるでしょう。
行政書士試験の独学用テキスト、『行政書士過去問マスターDX』の特徴を以下紹介します。
・過去問が法律別と科目別に分かれており、独学時にとても学習しやすく覚えやすい
・多肢選択式・記述式は、過去13年分掲載されている
・試験科目の法改正にも対応
・分かりやすさを重視しているので、初学者でも知識を会得しやすい
参考 Amazon 行政書士過去問マスターDX 2022年版
試験に合格する以外で行政書士資格を取得できる方法とは?
(1)公務員として一定年数行政事務に携わっている
国家公務員や地方公務員として行政事務に一定年数従事していることも行政書士資格を得ることができる要件となっています。
最終学歴の高卒の方は17年、中卒の方は20年の実務経験を積むことで、行政書士の国家試験を受けずとも行政書士資格を取得することができます。
平成30年の日本行政書士連合会のアンケートでは登録資格者の15.5%が公務員行政事務からの登録者であり、さらにその内訳は定年退職後に行政書士として再出発する60歳前後の人が大半を占めているというデータもあります。
(2)行政書士資格を得る他資格に合格する
行政書士国家試験以外の他資格合格者にも自動的に行政書士資格が与えられることがあります。
この方法で行政書士になられた方は、日本行政書士連合会のアンケートによれば14.1%となっています。
試験に合格すると行政書士資格を与えられる国家資格は、弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の4つで、この中でも税理士からが13.4%と最も多くなっています。
他資格合格者が行政書士登録をしている場合は、税理士や会計士などもともとの取得資格の業務をメインで行っており、行政書士業務は関連する一部の業務に留まる場合が多いようです。
行政書士資格を得られる国家資格は、行政書士試験よりも難易度が高いため、はじめから行政書士を目指す方のルートとしてはあまり現実性がないかもしれません。
まとめ
当ページでは、以下のことをお伝えしました。
・行政書士試験は独学でも合格できる(勉強時間の目安は約600時間~)
・独学のメリットは「費用を安く済ませられる」「自分のペースで学習できる」といった点
・独学には「合格しにくくなる」「分からないことをすぐに解決しにくい」「最新の試験情報をキャッチしにくい」などのデメリットもある
・独学時には、学習期間を1年程度設け、計画を立てて学習を進める必要がある
・効率的な学習がしやすくなるので、学習当初は入門書や入門編の参考書の内容のインプットがおすすめ
・解答スピードを早めるため、正確な知識を得るためにアウトプットが必要
・効率的な学習のためには頻出問題を解くのが好ましい
・過去問でよく問われる重要ポイントの学習をしていく方が良い
・行政書士試験の独学用テキストはそれぞれ魅力がありおすすめ
上述の通り、独学でも行政書士試験に合格することは可能ですし、費用を安く抑えることができるのは魅力ですが、独学より、通信講座を受講したりスクールに通学することで合格しやすくなる可能性は高いでしょう。