行政書士と司法書士はどちらがおすすめ?
司法書士の方が業務範囲が広いため、行政書士よりも待遇の良い可能性が高い
行政書士と司法書士の業務内容について紹介をいたします。
行政書士の主な業務内容は以下の通りです。
・官公署に提出する書類作成や代理、相談業務
行政書士が扱う官公署に提出する書類は、主に許認可などに関するものです。官公署に提出する書類で扱えるものは、1万種類を超えます。
・権利義務に関する書類作成や代理、相談業務
権利義務に関する書類とは、書類の中でも、権利の発生・変更・存続・消滅の効果の発生を目的とする「意思表示を内容」とするもの。例えば、遺産分割協議書や各種契約書、内容証明などのことです。
・事実証明に関する書類作成代理、相談業務
事実証明に関する書類とは、文書の中でも、「社会生活に交渉を有する事項」を証明するに足りる書類をいいます。例えば、議事録や会計帳簿、申述書などのことです。
・その他の特定業務
例えば、地方入国管理局長に対して届け出を行った申請取次行政書士が行う、「出入国管理」や「難民認定法」に定められている申請に関し、申請書や資料などの提出、書類の提示などの業務があります。
司法書士の主な業務内容を紹介します。
・登記や供託手続の代理
・法務局に提出するさまざまな書類の作成
・法務局長に対して行う登記や供託の審査請求手続の代理
・裁判所や検察庁に対して提出する書類の作成、法務局に対して行う筆界特定手続書類の作成
・上記に関する相談
・認定司法書士は、簡易裁判所での訴額140万円以下の訴訟・裁判外和解・仲裁事件・民事調停などの代理とこれらに関する相談
・5,600万円以下(対象土地の価格)の筆界特定手続の代理とこれに関する相談
・家庭裁判所から選任される破産管財人や不在者財産管理人、成年後見人など
諸説ありますが、一般的には、司法書士の方が行政書士より業務範囲が広いです。
ただし、業務範囲が広いため、収入面に注目して比較をしてみると、司法書士の方が待遇が良いといえます。勤務型司法書士の平均年収が約400万円なのに対し、勤務型行政書士の平均年収が約300万円だからです。
細かな部分を除き、平均的な年収で見てみると、司法書士の平均年収が約630万円、行政書士が約600万円なので、独立まで考えれば収入に大きな違いはないといえます。
現在は、士業の世界では法人化が進み、同じ職場(グループ内)に行政書士と司法書士がいる場合もあります。職場では、行政書士と司法書士はそれぞれ扱っている業務のスペシャリストとして活躍しており、保有資格の違いにより、職場での地位などが異なるということもないでしょう。
行政書士講座・スクール比較行政書士と司法書士ではどちらの試験の方が難しい?
試験の難易度は司法書士の方が高い
行政書士試験と司法書士試験を比較した場合、一般的に司法書士試験の方が難しい試験だとされます。試験難易度が違う原因の一つに司法書士試験の科目数の多さがあげられます。科目数が多くなると、学習量が増えるので難易度が上がるということです。
難易度をイメージしやすくなるように、両資格の科目数を紹介します。司法書士試験は、憲法・民法・商法(会社法含む)・刑法・不動産登記法・商業登記法・供託法・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法・司法書士法の11科目です。行政書士試験だと、憲法・行政法・民法・商法(会社法含む)・基礎法学・一般知識の6科目。
司法書士試験の方が行政書士試験より難しい理由は他には、取らなくてはいけない点数が高いということもあげられます。相対評価の試験の司法書士試験は、何点取れば合格と断言できませんが、例年の試験結果から、近年は得点率約73%(280点中約206点)取れば合格が見えてきます。行政書士試験は、絶対評価の試験で、得点率6割以上(300点満点中180点以上)で合格です。
得点率に関しては、足切りも関係している可能性もありかと思いますが、司法書士試験の方が厳しいといえます。相対評価の試験なので断定的なことはいえませんが、司法書士試験に合格する場合、近年は最低、午前択一71%以上、午後試験68%以上、記述43%以上の得点を得る必要があります。行政書士試験に関しては、絶対評価の試験なので例年基準が変更することはなく、足切りは法令等科目満点の50%以上、一般知識等科目満点の40%以上です。
試験合格率から考えても、司法書士試験の方が難しいといえます。司法書士試験の近年の合格率は、2019年は3.6%、2018年度が3.5%、2017年度だと3.3%です。行政書士試験は、2019年だと11.5%、2018年が12.7%、2017年は15.7%となっています。ちなみに、司法書士試験と行政書士試験は両方とも学歴制限がないため、合格率を比較することにより難易度を予想しやすいです。
以上のことを検討すると、行政書士試験より司法書士試験の方が難しいといえます。
ただし、難易度が高い資格試験の方を必ずしも取得した方がいいとはいえません。行政書士資格を取得するメリットは、司法書士試験より比較的簡単に取得できるのにもかかわらず、前述したとおり、独立開業した場合に同じ程度の年収を得られるということです。司法書士資格を取得するには、1,200~3,500時間、行政書士資格を取得するなら400~800時間必要だとされています。
もちろん、司法書士資格を取得するメリットもあります。勤務にしろ独立にしろ平均的な数字で考えたら年収が高いことに加えて、行政書士と比較して、求人数が多い傾向があり、独立開業も成功しやすいです。
行政書士と司法書士、どちらの業務が合っているか、また、どちらのメリットを選びたいのかにより、取得する資格を選ぶことをおすすめします。
行政書士講座・スクール比較ダブルライセンスとして行政書士と司法書士を取得するメリットは?
仕事の依頼が増えたり、信用度も上がる!
行政書士資格と司法書士資格のダブルライセンスだと、それぞれの業務ができるようになります。
例えば、離婚協議書と財産分与の名義変更登記、遺産分割協議書と相続登記、許認可と会社設立登記などをセットで依頼を受けられるようになります。
依頼可能な業務範囲が広くなると、それはアピールポイントとなり、めんどうなことを一か所で任せたいと考える人の心を掴め、依頼されやすくなります。
また、信用度もアップします。行政書士試験も司法書士試験もどちらも難しい試験ですので、一つの資格保持者より、2つの資格を持っている人の方が優秀な先生だと判断されやすくなるということです。
行政書士であっても司法書士であっても、なんらかの業務を依頼したことがある人はそれほど多くありません。また、依頼料も高額になることが多いです。士業が依頼を受けるには、他の職種よりもなお一層、信用が大切になるのです。
さらに、一方の資格試験に合格後、試験科目で共通なものもあるため、行政書士試験か司法書士試験の学習にすんなりと入っていけるメリットもあります。民法・商法(会社法含む)・憲法は、共通科目です。出題の仕方も、択一式は共通です。
通信講座を運営しているスクールなどによっては、他資格を受験していたり合格している場合、別資格の講座を受ける際に割引となるケースもあります。
以上のようなメリットがあるので、行政書士資格と司法書士資格のダブルライセンスを目指してみるのは良いかもしれません。
行政書士資格と司法書士資格とのダブルライセンスを目指す場合、一方の資格取得の際に得られた知識を最大限いかすために、一つの資格に合格したあとすぐに、他方の資格の学習に入ることをおすすめします。時間が経過してしまうと、知識を忘れてしまいますし、法改正がある場合があるからです。
行政書士講座・スクール比較まとめ
この記事では、以下のことをお伝えしました。
・「業務に対する適性」「資格のメリット」を考慮して、行政書士資格と司法書士資格、どちらを取得した方がいいのか判断するのがよいこと
・「ワンストップサービスを行いやすい」「信用が上がる」などのメリットがあるので、できるなら行政書士資格と司法書士資格のダブルライセンスで営業した方がいいこと
これからの時代、終身雇用が崩壊するといわれており、正社員だとしても、いつまでも身分が保証されていると油断してはいけません。
行政書士資格と司法書士資格は国家資格であり社会的にとても信頼されている資格です。比較的独立開業が成功しやすいです。先生といわれることになる行政書士と司法書士は、人生経験豊富で貫録あるほうが信頼されやすくなるので、30代や40代以降でも独立開業は十分できます。
▼「司法書士」の資格の詳細や試験データについては、下記リンクよりご確認いただけます。
行政書士講座・スクール比較