日本語教師とは?
仕事内容
日本語習得を目指す外国人に日本語を教えます。一般的に日本語学校では、日本の大学・大学院などへの進学に必要な日本語能力の指導と、仕事や日常生活で使う日本語の指導のコースがあります。
授業では、「読む」「話す」「書く」「聞く」の総合的な日本語力をバランスよく指導し、さまざまな場面で使える日本語力の習得を目指します。コースは1年から2年かけて教えるところが多いですが、2ヶ月、3ヶ月、半年といった短期コースを設けている学校もあります。
また、授業を行うだけではなく、授業計画の作成、教材の準備、テストによる評価、出席・成績の情報管理などを行います。学生からの授業に関する質問や進学相談にのることもあります。
働く場所
日本語教師は日本国内・国外に需要があり、活躍の場は多岐にわたります。
国内
日本語学校
小・中・高校
大学
インターナショナルスクール
企業(外国人従業員への日本語レッスンや研修)
自治体の日本語教室
塾・家庭教師
国外
日本語学校
企業(外国人従業員へ日本語レッスンや研修)
塾・家庭教師
働く際は日本語教師の資格以外のスキルを持っていると有利になる場合があります。例えば、大学では、日本語教育や言語学関連の博士号以上が求められたり、公立学校では教員免許、インターナショナルスクールでは英語スキルが求められることがあります。
また、自治体の日本語教室はボランティア活動であることが多いです。多くの日本語教師は、日本語学校で教壇デビューしています。
日本語教師になるには?
国家資格は必須条件?
日本語教師には、国家資格「登録日本語教員」があります。2024年4月から始まった新しい資格です。
日本語学校の中には、文部科学大臣の認定を受けた「認定日本語教育機関」があり、そこで教員として働く場合には「登録日本語教員」が必須です。
しかし、海外の日本語学校で働いたり、プライベートレッスンを開講したりなど、「認定日本語教育機関」以外で教える際は、国家資格がなくても問題ありません。とはいえ、文化庁が認める研修の修了や民間資格「日本語教育能力検定試験」の取得、大学で日本語教育を専攻していたか、実務経験があるかといった一定の条件を課されることが多いです。認定日本語教育機関でなくても、採用条件の一つとして登録日本語教員の資格を求められることもあります。
「登録日本語教員」は、日本語教育の質を担保するために作られた資格であるため、取得していると就職活動の幅が広がると言えます。
国家資格を取得するには?
資格取得ルート
日本語教師の未経験者が資格を目指す場合、主に「養成機関ルート」と「試験ルート」があります。それぞれ試験や研修の有無が異なります。
| 養成機関ルート | 試験ルート | ||
| ① 登録実践研修機関と登録日本語教員養成機関の登録を受けた機関で課程を修了する | ② 登録日本語教員養成機関の 登録を受けた機関で 課程を修了する | 独学で試験を目指す | |
| 基礎試験 | 免除 | 免除 | 〇 |
| 応用試験 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 実践研修 | 養成課程で実施 | 〇 | 〇 |
試験や研修の負担が少ないのは養成機関ルート①、反対に試験も研修もすべて必須になるのが試験ルートです。それぞれのルートのメリット・デメリットをまとめました。
| 養成機関ルート | 試験ルート | |
| メリット | ・基礎試験免除 ・養成機関で研修を受けられる(①のルートのみ) ・養成機関で基礎から学習できる |
・資格取得までの費用を抑えられる ・自分のペースで学習できる |
| デメリット | 養成機関に通うため受講費用と時間がかかる | ・2つの試験を受けなければならない ・別途実践研修の履修が必要 |
日本語教師未経験者の方には、基礎からしっかり学べる養成ルートがおすすめです。メリット・デメリットをふまえて、自分に合ったルートを選びましょう。
試験概要
受験資格
だれでも受験ができます。年齢、学歴、国籍などの条件はありません。
受験料
- 通常(基礎試験および応用試験受験):18,900 円
- 基礎試験免除(免除資格の確認および応用試験受験):17,300 円
- 基礎試験および応用試験の免除(免除資格の確認):5,900 円
試験ルートの方は通常、養成機関ルートの方は基礎試験免除が該当します。尚、基礎試験および応用試験の免除は条件を満たした現職者向けです。
試験日
新しい資格のため過去の実施回数は少ないですが、これまで試験は11月、結果通知は12月に行われています。
試験内容
| 基礎試験 | 応用試験 | |
| 試験時間 | 120分 | 読解:100分 聴解:50分 |
| 出題方法 | 選択式マークシート(1問1点) 100問 |
選択式マークシート(1問1点) 読解:60問 聴解:50問 |
| 出題内容 | 日本語教育に必要な基礎的な知識・技能を問う。 1、社会・文化・地域 2、言語と社会 3、言語と心理 4、言語と教育(教育実習を除く) 5、言語 |
基礎的な知識・技能を活用した問題解決能力を問う、領域を横断した出題。 聴解問題では、日本語学習者の発音や教員とのやりとりを聞いて、実際の指導に即した問題が出題される。 |
合格基準/合格率
第1回となる「令和6年度日本語教員試験」の結果をご紹介します。
合格基準
基礎試験:出題内容5区分において、各区分で6割程度の得点かつ、総合得点8割程度。
応用試験:総合得点で6割程度。
合格率
| 基礎試験・応用試験受験 | 応用試験受験 (基礎試験免除) |
全体(試験免除者も含む) | |
| 合格率(%) | 9.3 | 61 | 62.6 |
参考:試験ルート(基礎試験・応用試験受験)での合格率は8.7パーセント
第1回の結果を見ると、試験ルートの合格率が著しく低く、基礎試験の難易度の高さがうかがえます。基礎試験が免除された応用試験受験者の合格率は6割を超えていることから、一発合格を目指したい方は、養成機関ルートから目指すのがいいかもしれません。
経過措置
登録日本語教員は新しい資格のため、経過措置対応があります。主に現職の日本語教師向けの対応ですが、これから資格を目指す方にも関係するものがあります。
Cルート(4大卒以上)
「必須の50項目に対応した課程」を修了した方は基礎試験と実践研修が免除され、応用試験のみとなります。現職者に関わらず、これから資格取得を目指す方も対象です。尚、2033年3月31日までの期間限定、4大卒以上の方が対象の経過措置です。
現職者向けの経過措置対応(2029年3月31日まで)
すでに1年以上日本語教員として働いている方は、養成課程や資格の有無によって、対応が異なります。
■現職者で「必須の50項目に対応した課程」以前の課程を修了した方D-1(4大卒以上)
指定の養成課程以外で5区分の教育内容を学習した場合、基礎試験と実践研修が免除されます。講習Ⅱの受講と応用試験の受験が必要です。
■現職者で「必須の50項目に対応した課程」以前の課程を修了した方D-2(4大卒以上)
CルートやD-1に該当しないものの現行の要件に当てはまる課程を修了した場合、基礎試験と実践研修が免除されます。講習Ⅰ・Ⅱの受講と応用試験の受験が必要です。
■現職者で民間試験に合格した方E-1
1987年4月1日から2003年3月31日までに日本語教育能力検定試験に合格している場合、講習Ⅰ・Ⅱの受講のみとなります。
■現職者で民間試験に合格した方E-2
2003年4月1日から2024年3月31日までに日本語教育能力検定試験に合格している場合、講習Ⅱの受講のみとなります。
■上記以外の現職者
基礎試験と応用試験の受験が必要ですが、実践研修は免除されます。
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日本語教師の働き方
専任教師/常勤教師/非常勤教師
日本語教師の活躍の場は多岐に渡りますが、日本語学校を例に専任教師、常勤教師、非常勤教師の働き方をご紹介します。
専任教師:正規採用で、民間企業でいう正社員の立ち位置です。無期雇用のため定年まで勤めることになります。
常勤教師:専任教師の仕事内容と似ていますが、有期雇用です。
非常勤教師:自分の授業のみを担当するパートタイムのような立ち位置です。授業がある日・時間に出勤します。尚、有限雇用です。
主な違いは、雇用期間(無期・有期)、勤務時間です。また業務内容も専任教師のほうが多くなります。
国内/海外
国内
日本語学校などの教育機関以外にも活躍の場所があります。
■企業(外国人従業員へ日本語レッスンや研修)
企業で働く外国人従業員を対象に指導します。日本語学校と同様の応募条件が課されますが、資格よりも実務経験を重視するところもあります。
■塾・家庭教師
ワーキングホリデーの方など、学習者の目的に合わせて授業を行います。集団授業だけでなく個人レッスンによる指導もあります。
海外
日本語教師の需要は国内だけでなく海外にもあります。現地の日本語学校などで働くほかに、国内の日本語学校の姉妹校や提携校に派遣されるというパターンやJICAなどの公的機関による派遣もあります。尚、海外で働く場合も、国内同様の資格や条件を求められることが多いです。
英語や現地の言語習得や、茶道・書道といった日本文化の知識・経験が要求されることもあり、さまざまなスキルが必要となります。
日本語教師のこれからのニーズ
国内の需要
日本語の学習者は近年増加傾向です。文部科学省の2023年度の調査によると、コロナ禍では約12万人まで下がった学習者数が、2023年には26万人を超えるまでになりました。 留学やビジネスなどで日本に訪れる方も多く、日本語を習得したいというニーズがうかがえます。
一方で、日本語教師の数は46,257人で、その半数はボランティアの方です。少しずつ常勤や非常勤教師の数が増えているものの、60代から70代のボランティアの割合が依然として多い状況です。
5年、10年先には、現在活躍しているシニア世代の方々がボランティア活動を引退するときが訪れます。年々高まる学習者のニーズに対して、教師の数が不足してしまうことが予想できます。
そして、日本語教育を行う学校や施設は、1990年度から2023年度にかけて3倍以上に増えています。 しかし、外国人比率が高いにもかかわらず、日本語教室がない空白地域は全国に80地域も存在します。学習者の増加にともない学校や施設が新設されれば、今後は日本語教師の求人も増えることが期待できます。
出典:日本語教育実態調査 令和5年度報告 国内の日本語教育の概要
国外の需要
2021年度の国際交流基金の調査によると、全世界141の国と地域で日本語教育が実施されています。教師数は過去2番目の多さ、学習者数は過去3番目の多さと、日本語教育のニーズの高さがうかがえます。
特に中国は、日本語教育機関の学習者が最も多い国です。国内でも日本語学習者数が最も多いのは中国であり、日本国内、国外問わず中国での需要が高くなっています。
また、世界全体の教師の働き方を見ると常勤74パーセント、非常勤26パーセントと、日本国内よりも常勤教師として働く方が多いです。
そして、全機関の63パーセント以上がパソコンやタブレット、スマートフォンなどを介して授業を行うオンラインによる授業を実施しています。中には、完全オンラインの学校もあります。
企業や学校への所属、個人事業としてのレッスンなど形態はさまざまですが、日本国内にいながらオンライン日本語教師として在宅で働く方法もあります。日本にいながらグローバルに活躍できる職業だと言えるでしょう。
日本語教師の仕事内容
生徒はどんな人?
日本国内では、学習者の6割以上が留学生です。次いで、ビジネス関係者やその家族、研修生・技能実習生と続きます。学業や仕事のために日本語を勉強する方が多く、日常会話だけでなく学校やビジネスの場を想定した日本語学習が求められます。
日本語を母語としない方を対象とした「日本語能力試験」では、日本語スキルを5つの段階(N1からN5)に分けています。日本語学習者の中にも、やさしいレベルから学びたい方、ビジネスで使える語学力を身につけたい方とさまざまです。
各レベルの例をご紹介します。
| 読む | 聞く | |
| N1 | 新聞の論説や評論文、内容に深みのある読み物を読んで、内容や構成、表現の意図を理解できる。 | 会話やニュース、講義を聞いて、内容を詳細に理解し、要点を把握できる。 |
| N2 | 新聞や雑誌の記事、一般的な話題に関する読み物を読んで、内容や表現の意図を理解できる。 | 会話やニュースを聞いて、内容を理解し、要点を把握できる。 |
| N3 | 日常的な話題に関する具体的な文章を理解したり、新聞の見出しから概要をつかんだりすることができる。 難しい文章は、言い換え表現があれば理解できる。 |
会話を聞いて、具体的な内容をほぼ理解できる。 |
| N4 | 基本的な語彙や漢字で書かれた身近な内容の文章を理解できる。 | ややゆっくり話す会話をほぼ理解できる。 |
| N5 | ひらがなやカタカナ、基本的な漢字で書かれた文や文章を理解できる。 | ゆっくり話す短い会話から必要な情報を聞き取ることができる。 |
このように、日本語習得にもさまざまな段階があります。初めて日本語を学ぶ方、独学で勉強してきた方、高度な語学力を身につけたい方と、学習者によって必要な指導が異なります。そのため学習者の現在の日本語レベルや、目標・目的に応じて、適切な指導が必要です。
授業内容の例
買い物をテーマにした授業を例に、カリキュラム案をご紹介します。
商品やお店の名前を確認する
写真や広告を使って商品名を読んだり、地図を使ってお店の位置を確認したりする。
生徒がわからない漢字やひらがな、カタカナは五十音表などを使って読み方を確認する。
会話のロールプレイ
買い物のロールプレイを行う。
例えば、「スーパーマーケットで牛乳を買う」という設定で、店員に牛乳の売り場を尋ねる会話の練習をする。
買い物をする
実際にスーパーマーケットまで行ってみて、買い物を経験をする。
このように話す、聞く、読む能力などを身につけられるよう、授業を組み立てたり展開したりします。
また、学校やクラスによっては日本で暮らす上での生活指導なども必要になります。語学としての指導だけでなく、日本文化やマナーについて教えたり、日本語によるコミュニケーションスキルを育んだりすることも、大切なポイントです。
まとめ
日本語学習者の増加にともない、日本語教師のニーズが高まっています。2024年に国家資格が新設されたように、国としても質の高い日本語教師を育成しようと動いていることがわかります。
日常で使っている日本語を、いざ人に教えるとなると難しいことも多いと思います。日本語教師として幅広く活躍するためにも、「登録日本語教員」の資格取得がおすすめです。興味のある方はぜひ挑戦してみてください。













