日本こころ財団
日本のこころの健康を促進するために、メンタルケア・ヘルス、心理学教育等、こころ(心理学)を一般リテラシーとして推進、増進する事業へ後援、支援などを行う財団。
別府武彦さん
心理学者/心理臨床研究家/医療福祉研究家(LGBTQのMtf)
・一般財団法人日本こころ財団 理事長主事
・教育ナビゲーション株式会社 代表等
そのほか、各医療機関、福祉施設、教育機関コンサルタント及びその関連役員や平成18年には厚生労働省より、政府管掌保険及び厚生年金保険事業に寄与したことより表彰。
主事業業では、医療(診療報酬、調剤、介護事務、看護、登録販売者、医師秘書)・福祉(ケアマネージャー・介護技能)・心理(メンタルケア)などを主体とした教育、教材開発者として従事。近年では心身健康を掲げ、その健康に寄与する美容や動物関連事業も立ち上げている。
受検者数は年々増加。高校生が先生と共に学び、受検するケースも
――まずは、こころ検定の創設経緯について教えてください。
こころ検定は心理学を体系的に学び、メンタルヘルスに関わる知識を日常生活や専門的な場面で活かしていただくことを目的に創設されました。ストレスや心の不調を抱える人が増えている現代において、一般の方々にも心理学を学んでいただくことは、心の健康にもつながると考えています。
検定の創設および日本こころ財団の設立には、メンタルケアカウンセラー(R)やメンタルケア心理士(R)等の養成に取り組んでいるメンタルケア学術学会が深く関わっています。同学会での教育活動から明らかになったのは、一般の方が心理学を学ぶことの意義と「心の教育」の重要性です。こころ検定を通して、心理学を一般教養として学べる体制を整えることで、社会全体のストレス軽減に貢献していくことを目指しています。
――2017年10月の検定開始から8年近くが経ちました。受検者数や受検者層の変化はいかがでしょうか。
受検者数は年々増えていますね。中高年層の受検者も多いですが、近年は高校生の受検者数の増加が目立ちます。先生と生徒が共に学んで受検をする、というケースもあります。
――高校生でも理解できるような内容になっているのですね!
幅広い世代が学びやすいように、こころ検定のテキストはすべてふりがなを振り、イラストも多く載せているんです。ただ、小中学生にはまだ難しい内容も含まれるので、中学校卒業程度の学力を受検目安としています。
こころ検定は心理学の基礎から応用までを段階的に学べるように設計されています。1級から4級まで5つの級がある中で、基礎心理学を学べるのが3級と4級です。はじめて心理学を勉強する方には、4級からの受検をおすすめしています。
心理学の勉強を通して心のメカニズムを理解する
――受検者層が多様になっている中、特に受検をすすめたいのはどんな方々でしょうか。
心理学を基礎から体系的に学びたい方、自分や他者の心の仕組みを理解して日常生活や職場でのコミュニケーションを円滑にしたい方、心理学の知識を活かせる福祉・教育・カウンセリング分野に興味がある方に、特におすすめしたいです。
また、心理学から得た学びは、ご自身のストレス管理やメンタルヘルスの向上に役立てることができます。私たちは誰でも日々の暮らしの中でストレスを抱えたり、不安や葛藤を覚えたりします。しかし、心理学の勉強を通して心のメカニズムが分かるだけで、そうした悩みはある程度解決されるんです。日ごろからネガティブ思考になりがちの方や気持ちが安定しない方、メンタルケアの知識をつけたいと思っている方にも、ぜひ学んでいただきたいですね。
――まさに、心の病の予防的な役割を果たせるわけですね。一般的な社会人にとっても、心理学を学ぶ意義やメリットは大きそうだと感じました。
「対人関係の向上」も、心理学を学ぶことによって得られる効果の一つです。職場でも学校でも、人と人とが関わる以上、対人コミュニケーションは避けて通れないものです。心理学を学ぶことで他者の考えや感情をより深く理解できるようになり、より円滑なコミュニケーションにつながります。
さらに、「意思決定の質の向上」「マーケティングや消費者心理の理解」「自己理解と自己成長」など、ビジネスで役立つ側面が多くあるのも一般的な社会人が心理学を学ぶ意義やメリットですね。
こころ検定での学びは、仕事をするうえでも幅広く役に立つ
――こころ検定での学びを仕事で活かすとしたら、具体的にはどんな職業でどのように活かせるのでしょうか。
まず挙げられるのが、医師や看護師、介護士といった医療・福祉分野の職種です。心理学の知識を活かしながら患者や利用者の心理状態を理解し、適切な対応をすることで治療やケアの質の向上が期待できます。特にメンタルヘルスやカウンセリングの分野では、患者のストレスや不安を軽減するためのコミュニケーション技術が重要です。
教師や保育士といった、教育関係者の仕事にも活かせる場面は多くあります。生徒や児童の発達段階に応じた指導を行う際に役立つのが心理学の知識です。例えば、学習意欲の引き出し方や問題行動の背景を理解することで、より適切な対応が可能になります。
――専門職以外ではいかがでしょうか。
ほかにも、経営者や管理職の方は心理学を活用することで、社員や部下のモチベーションを高めたり、効果的なコミュニケーションを図ったりすることが可能です。役職者でなくても、職場での人間関係や交渉、チームワークの向上にも役立ちます。営業や接客業についている方であれば、顧客心理の理解と、より良いサービスの提供が期待できます。
自分の心を理解し、相手の心を理解する
――今後、こころ検定として目指していることや展望についても教えてください。
心理学の全世代への普及と心のリテラシーや心の健康の向上を目指しています。心について興味がなかった人たちにもこころ検定の存在を知ってもらい、“心理学を学ぶといいことがある”と思ってもらいたいですね。必要としている方々に漏れなく情報が届くよう、当財団としては認知度向上にも一層努めていきます。
さらに、オンライン学習や試験を充実させることで心理学を学ぶ環境を整えることや、リスキリングの一環として次のステップに進む足がかりとしてこころ検定を活用してもらうことも目指しています。教育や福祉の分野でも一層活用してもらいたいですし、社会的信頼性の向上も図りたいです。
将来的には小学生から心理学に親しめるように、一般のみなさんにとっても心理学をより身近なものにしていきたいです。そして漢検や数検、英検のように、こころ検定が広く社会に認知され、社会全体の心の健康を支える一助となれるように、これからも活動を続けていきます。
――最後に、これから心理学を学ぶ方や心理カウンセラーを目指す方へメッセージをお願いいたします!
まずは自分自身を見つめて、自問自答してほしいです。自分の心を理解し、次に相手の心を理解してください。その手段として、こころ検定があります。
心理学を学ぶ前は何かと不安を感じたり、対人関係やコミュニケーションに苦手意識を持っていたりする方も少なくありません。実は私もその一人でした。しかし、心理学を学ぶことである程度心のメカニズムが分かるようになると、その原因にも気づけるようになります。自分の心を理解し、わだかまりや葛藤を自分で解消できるようになると、気持ちがとても楽になるんです。
心理カウンセラーを目指す方にとっては、知識だけでなく、相手の気持ちに寄り添う姿勢が重要です。時には難しい場面に直面することもあるかもしれませんが、あなたの存在が誰かの支えになることを忘れないでください。
「なぜ心理学を学びたいのか」「どんな心理カウンセラーになりたいのか」を自問しながら、一歩ずつ進んでいきましょう。あなたの学びが、誰かの人生をより良いものにする力になることを願っています。
心理学の世界へようこそ。あなたの旅が実り多いものになりますように!