保育士資格とは?
国家資格「保育士資格」の定義とは?
一般的に「保育士資格」は広く認知されている資格ですが、改めて保育士資格についてご説明します。
「保育士資格」とは国家資格であり、児童福祉法第18条の4で「保育士とは、第18条の18第1項の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう。」と定義されています。
「保育士資格」取得だけでは働くことはできない
保育士になるには、「保育士資格」を取得しなければいけません。
絶対に忘れてならないのは、資格取得後に都道府県知事に登録申請をおこない各都道府県の保育士登録を行うことです。
保育士証の交付を受けて初めて「保育士」として働くことができるので注意が必要です。
「保育士資格」誕生までの歴史
「保育士資格」が誕生するまでに約半世紀がかかりました。
1948年
児童福祉法に基づき現在の保育士の前身となる保母資格が誕生しました。
保母資格を取得する女性が増え、いわゆる「保母さん」という職業が社会に認知され、保育士を目指す男性も増え「保父さん」という呼称も広まりました。
1999年
男女雇用均等法の大幅な改正に伴い「保育士」という名称が誕生しました。
2003年
保母資格とは別に、国家資格として「保育士資格」が生まれました。
意外にも、保育士資格は十数年前に誕生した、新しい資格と言えるでしょう。
保育士になるには?
保育士資格を取得する2つのルート
保育士資格を取得するには2つのルートがあります。
ルート1養成校(専門学校・短大・大学)を卒業時に取得
厚生労働省指定の養成学校(大学・短大・専門学校)で2~4年学び所定の科目・課程を履修すれば、卒業時に保育士資格が得ることができます。
ルート2試験合格で取得
試験に向け学習し、年2回実施の保育士試験(筆記・実技)に合格することで保育士資格を取得することができます。
ルート1 養成校(専門学校・短大・大学)を卒業する
保育士資格が取得できる養成学校とは、厚生労働大臣が指定する専門学校、短大・4年制大学です。
この養成校で学び、所定の科目・課程を履修すれば、卒業時に保育士資格が得ることができます。
また、「保育士」と「幼稚園教諭」のダブル取得ができる学校も少なくないので、一度に2つの資格を取得しておけば、将来の選択肢が広がるでしょう。
ルート2 保育士試験に合格する
独学及び資格試験の通信講座受講や、スクールに通って学び試験合格を目指すルートです。
この場合は最短6ヶ月で取得可能ですが、保育士試験は、筆記試験8科目、実技試験2分野の構成になっており、難易度は比較的高いようです。
そこで、一度の試験で全て合格できなくても、一度合格した科目は3年間有効になっていますので、3年後に合格を目指すなど、自分のペースで学習するのもオススメです。
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試験概要
保育士試験は、筆記試験と実技試験があり、前期と後期を実施。年に二回チャレンジできます。
筆記試験
・保育の心理学
・保育原理
・社会福祉
・教育原理
・社会的養護
・子どもの保健
・子どもの食と栄養
保育実習理論 実技試験(筆記試験全科目合格者のみ)
下記の3分野から希望する2分野を選択
・音楽表現に関する技術
・造形表現に関する技術
・言語表現に関する技術
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受験資格
保育士試験を受験する前に、最終もしくは現在の学歴等により受験資格の規定がありますので資格の有無について確認をしておくと良いでしょう。
(A)大学を卒業している場合:
学校教育法に基づいた大学を卒業していれば、保育士に関する学部・学科でなくとも受験資格があります。
(B)大学に在学中・中途退学している場合:
大学に2年以上在学して62単位以上修得していたり、大学に1年以上在学中で62単位を年度内に修得できることが見込まれていれば受験資格があります。
中途退学をされた方の場合も、2年以上在学して62単位以上修得できている場合は受験資格があります。
(C):短期大学を卒業している場合:
学校教育法に基づいた短期大学を卒業していれば、保育士に関する学部・学科でなくとも受験資格があります。
(D):短期大学に在学中の場合:
学校教育法に基づいた短期大学であれば保育士に関する学部・学科でなくとも受験資格がありますが、年度中に卒業できなかった場合は受験資格を得ることができません。
(E):専門学校を卒業している場合:
学校教育法に基づいた専修学校(専門学校)を卒業していることと、卒業した課程が修業年限2年以上の専門課程であることの2点を満たしていれば、保育士に関連する学科でなくても受験資格があります。
(F):専門学校に在学中の場合:
学校教育法に基づいた専修学校(専門学校)であることと、在学している課程が修業年限2年以上の専門課程であることの2つを満たしていれば、保育士に関連する学科でなくても受験資格がありますが、年度中に卒業できなかった場合は受験資格を得ることができません。
(G):高等学校を卒業している場合:
平成3年3月31日以前に高等学校を卒業している場合は受験資格があります。
平成8年3月31日以降に高等学校の保育科を卒業している場合も、受験資格があります。
保育科以外もしくは保育科で、平成8年4月1日以降の卒業の場合は、受験資格に該当する施設で2年以上2,880時間以上の児童等の保護または援護に従事した勤務経験があれば受験資格があります。
●受験資格に該当する施設
保育所(利用定員20名以上)/保育所型認定こども園/幼保連携型認定こども園/児童厚生施設(児童館)/
児童養護施設/助産施設/乳児院/母子生活支援施設/障害児入所施設/児童発達支援センター/
児童心理治療施設/児童自立支援施設/児童家庭支援センター
※「受験資格認定基準に該当する施設・事業」での勤務経験の場合は、都道府県知事による受験資格認定(知事認定)が必要になります。
(H):中学卒業の場合
5年以上かつ7,200時間以上、児童等の保護または援護に従事した勤務経験があり、受験資格に該当する施設での勤務経験があれば、受験資格があります。
●受験資格に該当する施設
保育所(利用定員20名以上)/保育所型認定こども園/幼保連携型認定こども園/児童厚生施設(児童館)/
児童養護施設/助産施設/乳児院/母子生活支援施設/障害児入所施設/児童発達支援センター/
児童心理治療施設/児童自立支援施設/児童家庭支援センター
※「受験資格認定基準に該当する施設・事業」での勤務経験の場合は、都道府県知事による受験資格認定(知事認定)が必要になります。
(I):勤務経験(高校を卒業している場合):
①勤務期間2年以上の勤務、②総勤務時間数2,880時間以上の勤務、③児童等の保護または援護に従事の3つを満たしており、受験資格に該当する施設での勤務経験があれば受験資格があります。
●受験資格に該当する施設
保育所(利用定員20名以上)/保育所型認定こども園/幼保連携型認定こども園/児童厚生施設(児童館)/
児童養護施設/助産施設/乳児院/母子生活支援施設/障害児入所施設/児童発達支援センター/
児童心理治療施設/児童自立支援施設/児童家庭支援センター
※「受験資格認定基準に該当する施設・事業」での勤務経験の場合は、都道府県知事による受験資格認定(知事認定)が必要になります。
(J):勤務経験(高校を卒業していない場合):
※中学卒業の場合と同じ
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保育士国家試験の受験資格・試験日程・合格率・難易度
難易度・合格率
保育士試験の総合合格率は約20%です。
実技試験の合格率は例年約80~90%前後ですが、学科試験の合格率が低いため、総合合格率も低くなっています。
学科試験の合格率については公表していない年もありますが、概ね30%前後と考えられます。
学科試験の合格率が低い理由には次の3つがあります。
学科試験の合格率が低い3つの理由
(1)筆記試験は8科目あり、科目数が多い
(2)試験範囲が広い
(3)試験の難易度に関係なく合格点は60点に設定されている
以上の理由により、保育士の学科試験の合格率は低くなっています。
確実に合格するためには、試験対策講座の受講がおすすめです。
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保育士の仕事内容・やりがい
仕事内容
子どもたちの身の回りの世話、遊びなど、子どもの保育業務はもちろんのこと、園の運営、事務作業、保護者対応など、多岐に亘ります。
イベントの企画や準備など
また、遠足や運動会、お泊り保育など、一年を通してさまざまな行事があり、その企画、準備、当日の運営など日常業務に加えて、日々遂行していくことが求められます。
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やりがい
保育士は子どもの命を預かる仕事であるがために責任が重く、大変な仕事です。
また、保護者への対応や事務仕事、スケジュール管理、イベントの準備、飾りつけ、園内の掃除や換気など、子どもたちと一緒でない時間でも保育士の仕事は多くあります。
子どもたちの笑顔や成長がやりがい
何をやりがいと感じるかは人それぞれですが、「子どもたちの笑顔や成長が見られる」ということを一番に挙げる保育士さんが多いようです。
子どもたちは何に対しても素直に感情を表し、特に乳幼児のうちは泣くことも多くあります。
ですが、お世話をするうちに子どもたちの笑顔を見ることができ、日々の成長を実感できることは大きな魅力であり、やりがいに繋がるといえるのではないでしょうか。
保育士がやりがいを感じる瞬間
・子どもの笑顔が引き出せたとき
・子どもの成長を感じるとき
・入園式や卒園式、運動会などイベントがうまく進められたとき
・保護者からの育児相談・感謝の言葉をもらったとき
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保育士のやりがいとは?
保育士の給料・年収
公立保育園の場合
公立保育園で働く保育士は「地方公務員」になります。
したがって、地方公務員としての昇給制度、賞与制度が適用され、給与も平均月収30万円以上が一般的です。
私立保育園の場合
一方、私立保育園で働く保育士の場合は、平均月収20万円以上と公立保育士に比べ、賃金は比較的低いようです。
しかし、私立保育園の場合、運営母体の経営状態や地域環境に左右されますので、必ずしも、私立保育士の給与が安いとは言い切れません。
近年では国の施策として保育士の給与改善への動きもあり、今後の報酬アップも期待できます。
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保育士の給料・年収・月給
公務員保育士とは?
公立の保育所で働く保育士のことです
公務員保育士になるには、保育士資格を取得し、かつ公務員試験に合格する必要があります。
倍率も高く人気
私立保育園で働く保育士と比較すると、待遇が良いのがその特徴です。
そのため、公務員試験の倍率は10倍を超える自治体もあるほどの人気になっています。
「異動」にも違いがある
公務員保育士と私立保育士とでは給料などの待遇以外にも、異動のある・なしなどの違いがあります。
関連記事でも詳しくまとめておりますので、ぜひご覧ください。
関連記事:
公務員保育士とは?給料や待遇・公務員試験について紹介
保育士と幼稚園教諭の違い
幼稚園の先生の場合
幼稚園の管轄は「文部科学省」、幼稚園は「学校」という位置づけになりますので、幼稚園で働くには「教諭」免許が必要です。
よって、幼稚園教諭の仕事は「教育」になり、勤務先は公立幼稚園もしくは私立幼稚園となります。
保育園の先生の場合
保育所は厚生労働省管轄になり、児童福祉法第18条の4で保育士は“保育に関する指導を行う”と記述されています。
勤務先は、認可保育所(公立・私立)・認定保育所(私立)・無認可保育所、乳児院や児童養護施設、民間の託児施設やベビーシッターなどでも働くことが可能です。
下記のページでも「保育士・幼稚園教諭の違い」を詳しくご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
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保育士資格と幼稚園教諭免許の違い【資格取得方法や待遇の違いを紹介】
試験データ
項目 | 内容 |
---|---|
資格・試験名 | 保育士試験 |
試験日 |
【令和2年度前期 保育士 筆記試験】 【令和2年度前期 保育士 実技試験】 【令和2年度後期 保育士 筆記試験】 【令和2年度後期 保育士 実技試験】 |
試験区分 | 国家資格 |
主催団体 | 社団法人全国保育士養成協議会 |
受験資格 | (1)短大卒程度以上の者(ただし、平成3年3月31日までの高卒者などは、高校卒業以上なら受験可能) (2)高校を卒業した後、児童福祉施設で2年以上、児童の保護に従事した人 (3)児童福祉施設で5年以上、児童の保護に従事した人 ※学歴により複雑に異なります。詳しくは http://www.hoyokyo.or.jp/exam/qualify/ を参照ください。 |
合格率 | 10~20%程度 |
出題内容・形式 | 筆記試験科目 (1)保育の心理学 (2)保育原理 (3)子ども家庭福祉 (4)社会福祉 (5)教育原理 (6)社会的養護 (7)子どもの保健 (8)子どもの食と栄養 (9)保育実習理論 実技試験分野 (1)音楽に関する技術 (2)造形に関する技術 (3)言語に関する技術 |
検定料 | 12,950円 (内訳:受験手数料12,700円+受験申請の手引き郵送料250円) |
問い合わせ先 |
一般社団法人 全国保育士養成協議会 保育士試験事務センター http://www.hoyokyo.or.jp/exam/ 〒171-8536 東京都豊島区高田3-19-10 フリーダイヤル:0120-4194-82 (オペレーター対応は月~金:9時30分から17時30分 ※祝日を除く) (他の時間帯は自動音声によるご案内となります。) |
保育士試験についての詳細は 『保育士国家試験の受験資格・合格率・難易度』をご覧ください。