日本語教師養成講座を安く受講するには?
そもそも日本語教師養成講座とは
未経験者が日本語教師の国家資格「登録日本語教員」を取得するには、主に「養成機関ルート」と「試験ルート」があります。
【養成機関ルート】
登録日本語教員養成機関で必要な課程を修了し、日本語教員試験の応用試験に合格する。その後実践研修(教育実習)を履修する。
※養成機関ルートの場合、基礎試験は免除
※登録日本語教員養成機関が登録実践研修機関を兼ねている場合、実践研修は課程の中で一体的に履修できる。
【試験ルート】
日本語教員試験の基礎試験と応用試験に合格し、実践研修(教育実習)を履修する。
独学で目指す場合は「試験ルート」になりますが、初年度の「日本語教員試験」の基礎試験は難易度が高く、合格率が非常に低かったことがわかっています。
「養成機関ルート」は、養成機関で日本語教師に必要な知識や理論、実践スキルを学べる上に、基礎試験が免除されるというメリットがありますが、学費が必要になります。学校によって異なりますが、総額で50万円から60万円の学校が多く、金銭的な負担をデメリットに感じる方もいるかもしれません。
そこで、費用を抑える方法として「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
(以下、リスキリング支援制度)」がおすすめです。経済産業省が行うキャリアアップを支援する制度で、条件を満たすと一定の支援が受けられます。
受講料の50%OFF
リスキリング支援制度の対象講座を修了した場合、受講費用の50パーセントがキャッシュバックされます。上限は40万円となりますが、受講費用を国が補助してくれるため受講の負担が大きく軽減されます。
例えば、60万円の養成講座の場合は、半額の30万円が返金されるということです。ただし、受講の修了が条件であるため、途中で学習を辞めてしまうと支援の対象外となるため注意が必要です。
受講料最大70%OFF
さらに、リスキリング講座の受講が修了した後に、実際に登録日本語教員として転職した場合は受講費用の20パーセントが追加でキャッシュバックされます。上限は16万円ですが、先の50パーセントと合わせると、最大70パーセントの割引となります。
60万円で養成講座を受講した場合は、実質18万円の負担です。
注意点としては、転職後1年間継続して働いていることが条件となることです。また、転職とはリスキリング支援制度で実施された職業紹介による転職、もしくは転職支援を行う職業紹介事業者が自社で雇用する転職(派遣会社で雇用されて派遣先で働くなど)によって、新たに雇用契約を結んだことを指します。
リスキリング支援事業とは?
概要
「リスキリング」とは、新しい環境で活躍するために必要なスキルを身につけるという意味があります。リスキリング支援事業では、リスキリングを行うことと、企業や産業間の労働移動の円滑化を一体的に行うことを目的に実施されました。
転職を考えている方を対象に、キャリア相談・リスキリング・転職のサポートを一体的に行います。また、リスキリングに必要な講座を受講できるように、国から最大56万円の補助金(最大70パーセントの割引)が出るため、受講者の負担が大きく軽減されます。
申し込み方法
受講料50%OFFまでの主なステップ
1.リスキリング支援制度の対象講座を探しましょう。ホームぺージなどに対象講座であることが記載されています。
2.キャリアカウンセリングを受けましょう。対象講座のホームページからカウンセリング申し込みや予約ができます。
3.対象講座の申し込みを行い、受講料を支払いましょう。キャッシュバックは受講が修了した後なので、支払いが発生する点に注意しましょう。
4.対象講座を修了しましょう。
5.振込に必要な書類を提出すれば完了です。
受講料最大70%OFFまでのステップ
1.職業紹介や転職支援サービスなどで就職活動を行います。講座を開講している事業者の職業紹介や転職支援サービス以外で就職すると、追加の20パーセント分のキャッシュバックを受け取れないため注意が必要です。
2.企業に就職して働きます。その際、フォローアップとして、転職先で1年間継続して働いていること、1年後に転職前より賃金が上がっていることを確認されます。
3.必要な書類を提出すれば完了です。
対象者
リスキリング支援制度は、働く方の転職活動をサポートするための制度です。そのため、制度を利用できる方は、①企業と雇用契約があること、②雇用主の変更をともなう転職を目指していることが条件となります。
①企業と雇用契約があること
正社員、パート、アルバイト、契約・派遣社員が対象者です。ただし、公務員、フリーランス、個人事業主、無職の方は対象外となります。
尚、キャリア相談対応の支援開始時(講座を開講している事業者への登録時とキャリア相談対応における初回面談時)に在職していることが条件です。この条件を満たしていれば、休職者も対象者になります。
②雇用主の変更をともなう転職を目指していること
他の企業へ正社員、パート、アルバイトとして転職したり、派遣先で正社員になったりすることです。契約・派遣社員の同じ企業内での正社員化や社内昇進、派遣社員の派遣先変更、独立・開業などは対象外です。
注意事項
学習の期限がある
リスキリング支援制度には、2年以内に受講を修了すること、転職先の入社日までに修了することという条件があります。さらに、事業者によっては12ヶ月以内で修了することを条件として定めているところもあります。
受講期間は学校ごとに異なりますが、日本語教師養成講座は6ヶ月から1年ほどのカリキュラムが多い傾向です。仕事と両立しながら期限内に修了できるように調整が必要です。
講座受講のみは支援の対象外
現在働いていて、転職を目指す方を支援する制度なため、「講座受講だけ受けたい」という方は支援の対象外となってしまいます。そのため、キャリア相談、リスキリング、転職支援と、一連のサポートを受けることになります。キャリア相談と転職支援で合計2回以上直接対話で面談するといった規定があるため、講座受講以外にもやることがあります。
リスキリングによるキャリアアップ支援事業とは?
キャリア相談、リスキリング、転職支援、フォローアップと、働く方の転職を一体的にサポートする制度です。
キャリア相談
キャリアコンサルタントとの相談を通して、これまでのキャリアやスキルの棚卸し、キャリアゴールの設定、リスキリング講座の検討などを行います。基本的には直接対話する面談形式(対面もしくはオンライン)で行われます。尚、簡単な相談の場合は、メールやチャットなどのやり取りが可能な場合もあります。
リスキリング
キャリア相談を踏まえて、必要な講座を受講します。
転職支援
キャリア相談やリスキリング講座を踏まえて、転職サポートや職業紹介が実施されます。
フォローアップ
転職後もフォローアップが行われます。転職先で仕事を続けられているか、転職前より賃金が上がっているかなどの確認があります。
教育訓練給付制度との違いは?
似ている制度として、厚生労働省が行う「教育訓練給付制度」があります。こちらは、働く方を対象にスキルアップやキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図る取り組みです。対象の教育訓練を修了すると、費用の一部が支給されます。
雇用保険に3年以上(初めて制度を利用する場合は1年以上)加入している方、離職から1年以内の方が対象者です。雇用保険の加入者であるため、公務員や自営業の方は対象外となります。
教育訓練給付制度には専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練の3種類がありますが、日本語教師養成講座では特定一般教育訓練と一般教育訓練が対象となっていることが多いです。
特定一般教育訓練…最大で受講費用の50パーセントが支給(上限25万円)
一般教育訓練…最大で受講費用の20パーセントが支給(上限10万円)
尚、リスキリング支援制度との併用はできません。
転職の予定がない方やすでに退職している方はリスキリング支援制度の対象外となるため、教育訓練給付制度の活用を検討してみてください。
制度を利用するなら2027年3月まで!
個人がリスキリング支援制度を利用できるのは2027年3月31日までです。
リスキリング支援制度を実施する事業者募集は現在5次募集まで行われました。当初は2025年3月末までだった期限が延長され2027年3月末までとなりました。しかし、6次募集の実施は未定であるため、今後も期限の延長があるかどうかわかりません。
また、登録日本語教員の資格取得には、2033年3月31日までの経過措置対応として「必須の50項目」対応の課程を修了した場合は基礎試験と実践研修が免除されます。
リスキリング支援制度と経過措置対応の2つを活用したい方は、早めの受講がおすすめです。制度が終わってしまう前に学習を始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
リスキリング支援制度の要点をまとめました。
- 対象者…現在、企業と雇用契約を結んでいる方(公務員、フリーランス、個人事業主、無職の方は対象外)
- 支援内容…対象講座の受講費用が最大70パーセントOFF(受講修了で50パーセントOFF/転職後1年経過で追加20パーセントOFF)
- 期限…2027年3月31日まで
経過措置対応と合わせて、登録日本語教員の取得を目指すなら今がチャンスです。日本語教師を目指している方は、リスキリング支援制度の対象となっている日本語教師養成講座の受講をぜひ検討してみてください。